太陽光発電を宇宙空間で行い、それを地球に伝送することが可能となってきています。
地球上のどこにいても安定した電気を供給でき、持続可能なエネルギーとして注目を浴びています。
そんな宇宙太陽光発電システムについて紹介します。
宇宙太陽光発電システムの仕組み
宇宙太陽光発電システム(SSPS: Space Solar Power Systems)とは、宇宙空間において、太陽光エネルギーをマイクロ波またはレーザー光に変換して地球に伝送し、電力として利用するシステムです。
「宇宙に浮かぶ発電所」とも呼ばれ、再生可能エネルギーの1つとして、
- エネルギー
- 気候変動
- 環境
などの人類が直面する地球規模の課題解決の可能性のあるシステムと期待されています。
JAXAでは、21世紀半ば以降、
- マイクロ波やレーザー光による無線エネルギー伝送技術
- 宇宙空間における大型構造物の構築技術等に関する研究
- 長期にわたる研究開発の進め方の検討を含めた総合的なシステム検討
を行っています。
宇宙太陽光発電システムの長所
宇宙太陽光発電システム(SSPS)には以下の長所があります。
- 二酸化炭素排出量が小さく、化石燃料の価格急騰の影響が小さい
- 地上の約1.4倍の強度の太陽光を利用でき、昼夜、天候の影響を受けにくく、エネルギー源として安定している
- 電力を必要とする地域へ無線により柔軟に送電でき、地上送電網への依存度が低い
- 地震等の地上の自然災害の影響を受けにくい
- 宇宙太陽光発電システムの課題
宇宙太陽光発電システム(SSPS)の実現には、以下のような技術面・安全面・経済面での課題があります。
- 高効率で安全な発電・送電・受電
- 大規模宇宙構造物の構築
- 軌道上での長期間の運用・維持・補修
- 宇宙空間への大量かつ低コストの輸送 等
宇宙太陽光発電システムの実現に向けて
政府は「宇宙太陽光発電システム」の実現に向けて、2022年度から宇宙空間で太陽光パネルを展開する実証実験を開始する予定です。
パネルの大型化や送電技術の確立などの技術面や、コスト負担などの予算面での課題を克服し、脱炭素社会を支える新たなエネルギー源として、50年までの実用化を目指しています。
パネルは2030年代に約30メートル四方、実用化段階では約2・5キロ四方に大型化する計画となっています。
これは、ゴルフ場がすっぽり入るような巨大な太陽電池を宇宙に浮かべることになります。
実用化すれば、原子力発電所1基分の100万kWを想定しています。
宇宙と地上を電線でつないで電気を送ることはできないので、代わりに電波(マイクロ波)で送ります。
衛星1基あたり100万kWを想定しているため、2km四方の太陽電池が必要になります。
発電した電気は、電子レンジでおなじみのマグネトロン(磁電管)や半導体でマイクロ波に変換し、送電アンテナ(フェーズドアレイ、直径2km)から地上の受電アンテナ(レクテナ、同2.5km)に送電します。
受電したマイクロ波は再び直流電気に変換され、電力会社の系統線につなぎます。
受電アンテナの面積はゴルフ場ぐらいの広さで、米国では砂漠を検討していましたが、土地の少ない日本ではシステム図にあるように海上に建設することが有力な選択肢になります。
雨や雲に影響されず昼夜の別なく発電でき、効率は地上の5~10倍
静止軌道にあるSPSは地球の地軸が23.4度傾いている関係で、ほとんど地球の影(=夜)に入らず、24時間昼夜の別なく直射日光を浴び春分秋分の夜間を除き発電できます。
しかもマイクロ波は天候に関係なく地上に届きます。
耐用年数については、地上ソーラーは空気中のホコリなどが表面ガラスに着いて発電効率が落ちますが、宇宙は空気がないので汚れません。
その代り太陽電池そのものに宇宙放射線や宇宙ゴミ(スペースデブリ)が当たり、少しずつ性能が劣化します。
それでも平均寿命は約30年は可能と考えられ、地上ソーラーの法定耐用年数17年の倍近く長く稼働できるはずです。
宇宙太陽光発電システムは、太陽電池の能力を完全に利用できるシステムで、将来の持続可能な再生可能エネルギーとして、魅力があることが理解してもらえると思います。
これはJAXAなどが試算していますが、100万kWのSPS1基の建設費用は衛星本体と地上装置を合わせて約1兆2436億円という数字が出ています。
内訳は宇宙太陽光発電本体が7950億円、地上の受信システム1714億円、打ち上げ輸送費は2772億円と見積もっています。
寿命は30年間とし、運営・保守・修繕費なども含んでいます。
これによる発電コストは8.5円/kWhという数字になります。あくまで現在価格との比較ですが、他の発電方式に十分対抗できる価格水準です。
経済産業省資料より↓↓
私達の生活に役立つこと
宇宙太陽光発電所から送電する際に使用されるマイクロ波電力伝送の技術は、地上でもIoT時代の「ワイヤレス給電」の手段として注目を集めています。
スマホの充電、機械やインフラに取り付けるセンサーへの給電など、用途は幅広いです。
まずは、マイクロ波による携帯電話のワイヤレス充電が挙げられます。
部屋にマイクロ波のビーム空間を作り、受電アンテナを埋め込んだ携帯端末をポケットに入れておけば、気づかないうちに充電できるといった使い方です。
レストランやショッピングセンターがマイクロ波スポットを設け、お客さんに携帯の充電サービスを提供すると集客効果も可能です。
ワイヤレス給電という新しい産業分野を興すことができるでしょう。
家庭からコンセントやケーブルが姿を消す日も遠くないでしょう。
まとめ
宇宙太陽光発電所が今後、主要な発電となってくれば世界中どこでも安定した電気を安価に
使用することができます。
地球温暖化の原因と言われているCO2排出の抑制もでき、私達が直面している地球規模の課題解決の可能性がある再生可能エネルギーとして期待されています。
宇宙太陽光発電で地球が救われるかもしれません。