「人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な一歩だ」
この言葉は、人類で初めて月面に降り立った宇宙飛行士のニール・オールデンアームストロング氏の言葉です。
月面に人類が降り立った日から、約52年の月日が経過した現在、再び人類が月面を目指そうとしています。
今回は、宇宙飛行士の月面着陸を目指し、NASA(アメリカ航空宇宙局)が計画している「アルテミス計画」についてご紹介いたします。
アルテミス計画とは?
アルテミス計画とは、2019年5月に発表されたアメリカ合衆国政府が実現を目指す、有人宇宙飛行計画です。
「最初の女性を、次の男性を」
を提唱し、2024年までに女性初の月面着陸を目指しています。
アルテミスの名前の由来
「アルテミス」はギリシア神話に登場する月の女神で、人類史上初の月面着陸アポロ計画の由来となった太陽神アポロンとは双子とされています。
今回の計画である、「アルテミス計画」
では、今回の計画と、名前の由来の関係性についてご紹介致します。
アルテミス計画に秘められた想い
NASAが提唱する
「最初の女性を、次の男性を」
なぜ、こちらの言葉を提唱したのでしょう。
実は、NASAにはある問題があったのです。
50数年ものあいだ、宇宙飛行士に女性を参加させる事を、視野に入れてこなかっため、女性宇宙飛行士に関するデータがNASAには不足しているのです。
宇宙が女性の体にどんな影響を与えるか、よくわかっていないかったのです。
そして、やっと宇宙に行くことになった女性たちは、男性による使用だけを想定して作られた宇宙服等に我慢しなければならないという問題もあるのです。
アルテミス計画の参加国
女性も含まれるアルテミス計画には、多くの国が協力し名乗りをあげています。
2020年10月14日の国際宇宙会議 (IAC) においての参加国は、当日に8カ国、その後11月に2カ国が署名し合計10カ国になりました。
- 日本
- アメリカ
- カナダ
- イギリス
- イタリア
- オーストラリア
- ルクセンブルク
- アラブ首長国連邦
- ウクライナ
- 韓国
今後も同様に加盟国が増えていき計画は、より一層活発化する見通しになっています。
アルテミス計画のミッション
アルテミス計画の主なミッションは、月面を広範囲にわたり探査し、2028年までに長期滞在が可能な拠点を月面に建築することです。
アルテミス計画の具体的なミッションは
- 月面の情報を可能な限り入手する。
- 人間が生活可能な基地を作る
- 将来の火星探査の拠点とする
以上のことを目的としています。
月面の情報を可能な限り入手する
宇宙開発が進んでいる現在ですら、月の謎はまだほとんど解き明かされていません。
月の情報を得るためには、無人探査機もしくは有人探査機で、月面に降り立ちサンプル回収等をするほかありません。
アルテミス計画を行う上で重要なミッションといえるでしょう。
人間が生活可能な基地を作る
月面基地(人間が生活可能な基地)を作る理由
- 費用削減
- 人類のエネルギー問題にも明るい兆しが見える可能性
費用削減
地球から月面に降り立ち、探査を行うには莫大な費用がかかってしまいます。
なので、月面に有人基地が出来れば費用を削減することが可能になります。
人類のエネルギー問題にも明るい兆しが見える可能性
月面基地が本格的に稼働すれば、月への人類の移住が可能になり、それに伴う新たな資源採掘も可能になります。
データ取集することが容易になり、他の惑星への有人探査の基地となるため、各国で現在計画されています。
さらに、月の重力は地球の約6分の1であるため、ISS(国際宇宙ステーション)などの無重量状態とはまた違った実験が出来る可能性も兼ね備えています。
将来の火星探査の拠点とする。
こちらの理由をご紹介いたします。
人類は「月」と「火星」、こちらの2つの惑星着陸を目標にしています。
地球と近い環境をもつ惑星が「火星」であるため、第二の地球を目指しまずは、月面で宇宙空間の様々な問題を理解した上で次のステップとして、目標を「火星」としています。
さて、月面に人類がいくためには、ISS(国際宇宙ステーション)以外にも別に宇宙ステーションを作る必要があります。
ゲートウェイ
2026年頃までの完成を目指す有人宇宙ステーション。
多国間で月周回軌道上に建築することが提案されている有人の宇宙ステーションです。
ゲートウェイを作ることにより、月面探査の効率を上げることができます。
太陽光発電を利用し、通信、科学実験室、探査車などを可能にし、無人機が収納できる空間など全てが一体となった宇宙ステーションです。
ゲートウェイでは惑星科学、天体物理学、地球観測、太陽物理学、基礎宇宙生物学、人間の健康と能力などの研究が行われることが期待されています。
アルテミス計画の現状
アルテミス計画は、2024年完成を目指して活動していますが、現在の状況はどうなっているでしょうか。
アルテミス計画の開発をSpaceXのみに選定
NASA(米航空宇宙局)は2021年4月16日、月面に宇宙飛行士を着陸させる機体をスペースXのみに委託したと発表しました。
NASAの委託契約は、イーロン・マスク氏率いるSpaceXのほか、ジェフ・ベゾス氏率いるBlue originが組織したチーム、単独で設計を行うダイネティクスの3社間で争われました。
今回のNASAの発表の中で最も驚かれた点は、3社の最終候補の中からスペースXのみが選ばれたことでしょう。
なぜ、SpaceXのみを選定?
NASAは通常、2つの民間企業を選定します。
なぜなら、一方の企業が失敗しても計画を続行できるようにするためです。
今回、NASAが1つの企業に絞り込んだ理由は、2つあります。
- 月に着陸可能なスターシップ(宇宙船)を造れるとNASAが確信している点
- 圧倒的低コストな入札金額
「SpaceXはNASAと密接に協力して着陸船の設計等について報告し、NASAの性能
条件と基準を満たしていることを確認した」
とNASAは提言しています。
そして、29億ドル(日本円で3000億超円)というSpaceXの入札価格は他企業の提案よりはるかに低く入札しており、また同社はスターシップ(宇宙船)の開発コストの半分以上を自ら負担すると公言しています。
このように、高い技術と予算を大幅に下げれることにより同社のみの選定になったのではないでしょうか。
アルテミス計画の一時中断
NASA(米航空宇宙局)が掲げる、宇宙飛行士を2024年までに再び人類を月へと送り込む「アルテミス計画」の目標について、新たな報告書で複数の事案により実現は難しいとの認識を示しました。
- 資金不足および新型コロナ感染症の影響、技術的な問題
- 受注を争ったBlue Origin社からの抗議と訴状
技術的な問題
大きな要因としまして、宇宙服の開発です。
NASAが新たな予算として10億ドル(日本円で約1100億円)超を次世代の宇宙服のために費やしたとしても、2025年4月までに宇宙服はフライトに間に合わないとし、完成時期は未定と結論付けられました。
抗議と訴状
Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が率いるBlue Origin社は、NASA(米航空宇宙局)を相手取った訴状を連邦裁判所に提出しました。
NASAは通常、2つの民間企業を選定します。
ですが、今回選定したのは、SpaceX社のみ。
このことを不服とし、抗議文を連邦裁判所に提出したとみられています。
それを受けて、NASAとイーロン・マスク氏率いるSpaceXとの間で行われていた有人着陸システムに関する公式の作業はいったん停止されました。
まとめ
人類が初めて月面に降り立った日から、52年の時間が経過しましたが、今もなお月面着陸計画が進んでおり成功する日が、本当に待ち遠しく感じます。
「アルテミス」の名前の由来から、現状までご紹介させていただきましたが世界各国が協力し行われている計画だと改めて感じました。
それほどに、大きな規模の計画であり、実現すれば宇宙の可能性が広がる重要なことだと思います。
予定通りの日程での実現は難しくはなりましたが、これからの「アルテミス計画」の動きに注目していきたいと思います。